“男の気持ち”・ふたつ
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2017年9月26日、
新聞の“男の気持ち”に載った文章で、
ずっと気になっていたけど、
最近また同じ方が投稿されていたので、書こうと思う。
少し長いけど、そのままの文章の方が、わかりやすいので。
『不登校』
幼稚園、小学校と天真らんまんに過ごした我が孫も今や中学生。
入学当初、好きな陸上部で頑張っていたが、
ちょっとした友達とのつまずきがもとで唐突に不登校が始まった。
慌てる周囲をよそに昼夜逆転で
ゲームざんまいの毎日を過ごしてる。
強がってはいるものの彼が一番苦しいのを私は知っている。
9月1日は自殺がピークになる日とのこと。
私にしても少なからず動揺した長い一日であった。
たまらず「どうしてる?」と電話すると
「アハハ、元気、元気」と笑われた。
不登校の君よ。
学校なんて行きたくなければ休んだっていいんだ。
勉強も成績もどうでもいいじゃないか。
ただ命だけは大切にしてくれよ。
長い人生、いろんなことがある。
不登校も一つの選択肢だ。
そこで得ることもきっとあるに違いない。
ここだけの話、
君の父親も中学時代に不登校の時期があった。
若かった私は途方に暮れた挙句、
なぜ人と同じことができないのかと息子を責めた。
今考えるとむちゃな親だった。
時は巡り、今、息子は我が子の不登校で悩んでいる。
「どうだ今ごろ、俺の気持ちが、わかったか」
と言いたいところだが、そっとしておこう。
自分の出る幕ではない、成り行きに任せよう。
みんないい方向に向かうことを祈ろうと決めてるから。
ともあれ四畳半の君よ。
じいさんだけは君の見方だ。
それだけは忘れないでほしい。
またいつか、すがすがしい君の姿を見られると信じている。
自重して頑張れ!
【福岡県直方市・臨床心理士・宮木慎次郎・64歳】
こうして書いておられる勇気に、感服。
お仕事柄、達観できるのかと思ったけど、
気になって切り抜いて一年。
2018年8月20日に、再び投稿されていた。
『旅』
中三の孫の夏休みが始まり、
かねて用意していた計画を実行した。
2人で空の旅に出て海沿いのホテルに泊まり、
数日を過ごしたのだ。
孫はもう1年以上も学校に行っていない。
当時周囲も慌ただしく騒ぎ、
いろいろな憶測が飛んだ。
本人は決して不登校の原因を言わないが、
部活の友達関係にあると私は一人推測していた。
旅行は爽快だった。
30階のベランダからは、
ずっとヨットが並ぶ箱庭のような港が一望でき、
カモメが自在に飛来し、
いっとき俗事から離れて、
ささやかなぜいたくを満喫した。
孫の気持ちも
快適な環境のもとで解放されたらしく、
珍しく興奮気味で、やや多弁になっていた。
「自分で自分がわからないんだ」
「ふと思い立って、幼稚園時代の家を訪ねたら、
ベランダに洗濯物が干してあって
めちゃくちゃ懐かしい気持ちになった」
「今のままでは
普通の高校に行けないので、
卒業後は働きながら、定時制に通おう・・・」
こんな彼のつぶやきを聞きながら、
私はふっと救われたような心境になった。
やはり、彼は持て余し気味な思春期にあって、
自分なりの多感な青春時代を過ごしていたのだ。
私は一瞬、胸が詰まって熱くなった。
一見、
かたくなに殻に閉じこもった外見からは想像できない、
豊かな彼の感受性に触れた気がした。
孫よ。
今生、私が君に出会えたのは
神様の粋な計らいにに違いない。
天からの二つとないプレゼントに
深く感謝しつつ、そっと言った。
「自分の思うままに生きたらいいよ」
【福岡県直方市・宮木慎次郎・65歳】
よかった!
新聞の投稿は、
その方の生きた声が聞けて、感動し、
学ぶことが沢山あります。
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はじめまして。
ここで私の過去の投稿を見せて頂いて驚き、また、とても有難く思いました。
母が私の腕の中で天に召されました。
昨年が初盆でした。
その時の心境を投稿したものがあります。
良かったらご笑読下さいませ。
どうぞ、いつまでもご健勝であらせますように。
男の気持ち
「孫の就職」
福岡県直方市・宮木慎次郎
(臨床心理士・66歳)
毎日新聞2019年8月6日 西部朝刊
定時制高校に通う孫が、有名なトンカツ屋さんで働き始めてもう4カ月になる。何度も何度も1次面接で落ちて落胆の末に見つけた人生最初の就職先だ。
内定のてんまつを聞いてうなった。面接の冒頭、「君はなぜ何度も落ちるか気づいているかい?」と問われたそうだ。
中卒で定時制だから、と答えた彼に「君の半ズボンがいけないんだよ」と諭され、彼に面接の極意まで説いたという。
内心またダメかと思っていると、なんとそこで採用になったという。聞いた私はその面接官に敬意に似たものを抱き、世の中の縁の不思議に感心もした。
孫は中学の3年間、先生と相性が合わず不登校だった。しかし周囲の心配をよそに自分で定時制高校を見つけだし、頑張って受験し、見事合格した。
今、昼は皿を洗い、夜は黒板と向かい合う環境にいる。仕事先の分厚いマニュアルとも格闘しているらしい。
先日の電話で、コックさん用の長い帽子をかぶって初めてカツを切った、と聞いた。また、店長がふいに査定をするのでいつも余念なくやっているとも。
右往左往していた両親に、初めての給料から生活費を渡したときの痛快さを愉快そうに話す彼に私は人生の機微を思った。
今、私はもうすぐ初盆を迎える母へ、いい報告ができることに感謝して過ごしている。