“女の気持ち”・ふたつ
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前に「男の気持ち・ふたつ」を書きましたが、
女の気持ちもあります。
新聞に掲載された方で、
心に響いた投稿を切り抜いています。
孫ができたからかもしれないけど、
親として、母として、
その気持ちわかる・・・と、書きたくなりました。
『奇跡の命』
数年前、息子夫婦が帰省した時
「子供ができないので、大学病院で治療を始める」と私に話す。
「成功率は高くないので期待しないでほしいと」念を押す。
突然に切り出された話に、
私は戸惑いを感じながらも
「子供がいると幸福で、
子供がいないと不幸だと言えないから」
と、静かに答えた。
息子夫婦が東京に戻った後、
息子との会話を一言一言反すうしては、
息子たちの希望がかなわなかったらと考え、
気持ちは重かった。
数か月後、「成功した」と息子からメールが来た。
半信半疑の私は早とちりかもと考え、
返信せずにいたら、
お嫁さんからも喜びのメールが届き、
やっと本当だと信じた。
この重大な事実が壊れたら大変だと思い、
安定期に入るまでは人様に話さず、
心の中で大切に温めていた。
「生まれそうなので入院」とメールが。
予定日より早いので一瞬不安がよぎるが、
ここは病院を全面信頼と腹をくくった。
「まだ?」、「まだ」と何度も繰り返すうちに、
気持ちは高揚し「もっと励ましなさい!」と送信。
息子が立ち会い出産なのか否か、私が知る由もないのに。
携帯が鳴り、写真付きメールが届いた。
生まれたばかりの丸々とした赤ん坊。
「ありがとうございます。病院さま」
と思わず頭を下げた。
写真をしげしげと眺める。
奇跡といえる命の誕生は、私の初孫。
息子夫婦には、未来の希望の光であろうと想像する。
こうして長い人生の第一歩を踏み出した孫は5歳になる。
【宮崎県延岡市・源島啓子・70歳】
当たり前でない命のお話に、
心がぐっと惹き付けられます。
『男泣き』
夫は涙もろい。
それも悲しい時ではなく、うれしい時に、よく泣く。
びっくりしたのは60年前、
三三九度の杯を持つ手が、震えていたので
横目で見たら、顔をくしゃくしゃにしていた。
2人の子供が入試に合格するたびにに泣き、
私にすればなんてことのない映画にさえ、感涙にむせぶ。
息子は小学生の頃、
野球に挑む父と子の情熱を描いたテレビアニメ「巨人の星」に夢中だった。
一緒に見ていた夫の涙に気づいた息子が、
洗面所からタオルを持ってきて差し出した。
「お父さんは泣き虫だなあ」
と、言いたげな息子の困惑顔が忘れられない。
その息子も父譲りか、うれし涙をこらえきれない。
今春、嫁さんとともに出向いた婦人科で、
妊娠を告げられ、
恥ずかしいくらい涙がこぼれたそうだ。
さあ、それからが大変。
月齢ごとに、胎児の写真付きメールが送られてくる。
臨月には、赤ちゃんの顔は美形かと無理な質問をよこす。
一日千秋の思いで待ったであろう11月下旬、女児誕生。
息子のうれし涙の量は想像に難くない。
喜びに言葉は不要とばかり、
赤ちゃんの写真付きメールだけが、次々に届く。
子供の誕生を切望していた息子が、
55歳でやっと父親になった。
企業で、年相応の役職にある男にしては、
どうかと思うが、
男泣きは、我が家の伝統である。
それに泣けるほどの喜びは、
一生にそうあるものではない。
目頭は熱くなっても、
涙で頬をぬらした記憶のない私は、
夫や息子の純な心ばえが、うらやましくなった。
【福岡市早良区・石橋幸子・82歳】
新しい命が生まれる時、
それぞれの方の気持ちや喜びが、よくわかる。
幸あれと祈りたくなる。
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